シロは先日13歳になった。
鼻腔内腫瘍と診断されてから2度目の誕生日。
まさか、13歳を迎えられるとは思っていなかった一年前・・・
強いシロは、この日まで生きた。
シロが生きていてくれることに感謝しつつ
こんなになるまで生かしてきてしまったことを シロに謝りたいと思った。
目に膿がたまるスピードが早まり
呼びかけにもなかなか反応しなくなった。
眉間から目の周りが腫れ、額の骨を腫瘍が押し上げている。
骨が溶け、腫瘍に押されて頭蓋骨が少しずつずれたのだと思う。
それはどんなに痛いだろうか。
シロは痛み止めも飲んでいない。
きっと我慢しているのだろうけど
おそらくは四六時中痛いに違いない。
それも、相当の痛みのはずだ。
膿が 口や鼻、目を覆う
シロの口臭は膿の臭いがする。
それはどんなに不快だろうか。
もしも、自分なら
どんな辛い毎日だろう。
四六時中出血がある。
血止めを飲んでも効かない。
それはどんなにしんどく、身体が重いだろう。
それらはどんなにシロを苦しめているだろう。
今までシロが幸せなように シロが喜ぶように 世話をしてきたつもりだ。
苦しそうにはしていたが、それでもトコトコ歩き
「撫でて」と寄ってくる。
出血も多く、くしゃみをして苦しそうだけど
それでもご飯は食べる。
ブーブーと鼻を鳴らして
かわいい寝顔で寝る。
だから、つい
そんな姿でも生きるシロを
どこかで自然に感じていた。
もちろん、夏ぐらいまでは散歩にも行き
シロにとって楽しい時間があったと思う。
でも、9月の終わりくらいからはきっと苦しい毎日だったのだと思う。
先日の朝、シロが寒そうに震えていた。
シロは夏と冬の毛が逆転してしまっているから
今はどんどん夏毛になっている。
毛布をいっぱい敷いても
丸くなると苦しくて眠れないシロは
お腹や背中が寒いのだろう。
以前に比べて随分痩せたシロは更に寒そうに見えた。
だから、服を着せようとした。
去年の冬、同じように夏毛で冬を過ごすシロに買ってあげたものだ。
ほとんど見えないシロは 声をかけながら触れてもビックリする。
そっと前足の片方を服にいれた。
慎重に 後もう一本・・・を通そうとしたら・・・
「ギャン!!!」と鳴きながら
私の手を噛んだ。
かなり小さな傷だったから、多分手加減してくれたと思うんだけど
シロを13年育ててきて
そんなふうに噛まれたのは初めてだった。
もともと野生の血を濃くひいているシロは
飼い主以外には危険な犬だった。
私のことがわからなくなったのだろうか・・・・??
ポロポロと涙がこぼれた。
目もほとんど見えなくて怖かったんだろう。
身体のあちこちが痛いのかもしれない。
脳がおかしくなって、わからなくなっていたのかもしれない・・・・
おそらく、その全部なのだろう。
改めて シロの姿を見てみると
生きていることが不思議なくらいだった。
いつのまにか、少しでもシロらしいところを無理やり探していたのかもしれない。
そしてまだシロらしいからと
生きていてほしい気持ちで シロを苦しめていたのかもしれない。
ごめんね・・・シロ。
こんなになるまで・・・・
弱くて情けない私は いっぱい泣いて
その夜、サルともう一度話し合った。
少しずつの変化だったから きっと私達も麻痺してしまい
シロの苦しむ姿に慣れてきてしまっていたのかもしれなかった。
心臓が動き、息をしていれば それでいいとは思っていなかった私たちなのに
シロを失いたくないあまりに 今日まで来てしまった。
たしかに、命が尽きるまで看取ってあげることも良いのだろう。
だけど、顔の外側に腫瘍が広がり
直接生命に影響が出にくいシロは
心臓が動く限り 苦痛から逃れられない。
そして、もともと体力のあるシロだからよけいにそれは長く続く・・・・・
今、ジワジワと毎日激痛が増えているのだと思う。
もともと痛みに強かったシロだから
きっとそれを見せまいとしているのだろう・・・
そんなシロのことをようやく両目で見ることができた。
噛まれたことで 目が覚めた。
あれほど忠実なシロがそうなるということは 相当の苦しみだ。
「もしかしたら、助けてってことなのかもな」
サルが言った。
「撫でて」と寄ってきていたのも
「助けて」だったのかもしれない。
この一ヵ月 毎日葛藤だった。
いや、病気がわかってから葛藤の連続だったけど
その中でも特にこの一ヶ月は 私も相当苦しかった。
シロにたいして、何の後悔もないよう接してきたつもりだったけど
散歩に行けなくなったときに
楽にしてあげていれば・・とも思う。
だけど、この一ヵ月があって
ようやくここまで考えることができた。
だから、この先を後悔しないようにしなきゃいけない。
サルと私は決断をした。
とら
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