シロがご飯を食べなくなった。
金曜日の夜からまったく食べない。
好きとか嫌いとか
そういうことじゃなく
食欲がないというか
食べると何かが不快なのかもしれない。
水は、一日一度だけ 少し飲む。
オシッコも自分でいく。
家の中は時々歩く。
だけど、さすがのシロもこう食べないでいると
痩せてきた・・・。
もともと筋肉質なシロ。
痩せたところなんて見たことがなかった。
末期の癌なんだから
それも当たり前なんだろうけど。
病院に連れて行って
いろいろな対処法はあるのかもしれない。
だけど、何をしたって治らない。
それなら、長引かせるだけ苦痛かもしれない。
それだけじゃない・・・
シロはもともと
飼い主以外には絶対に馴れない犬だ。
優秀な番犬で警戒心が強い。
他の犬とは8割けんかになるし
散歩だってまるでパトロールだった。
本来はイノシシや鹿をおびき寄せる犬種で
自分よりも大きなものに向かっていける。
だから、どれだけ大変だっただろう。
気楽にペットホテルに預けることもできず
他人に散歩を頼むこともできず
重いから、ひょいと抱き上げることもできなかった。
狂犬病の注射会場なんておそろしくて連れて行けず
(他の犬を怪我させそうで)
動物病院での注射だった。
その動物病院でさえ
サル(主人)と二人がかり、本当に大変だった。
シロ自身は
他の犬や人から私を守ってくれていたのかもしれない。
おそらくはそうなのだと思う。
いつだって守ってくれていたから。
今のシロは目もほとんど見えず
力も弱くなった。
だけど、きっと外に出て
慣れないところに行くと
必死で守ろうとしてくれるだろう。
そこが病院ということもわからないし
そこが自分の病気を診てくれるところということもわからないから。
他の犬から
先生から
私を守ろうとするだろう。
残り少ない力を振り絞って・・・・
それがわかるから
簡単には病院には連れて行けない。
ましてや今は
判断能力も鈍っている。
テレビに映っている人に向かって吠えたり
宅急便のおじさんにやけに吠えたりするときがある。
今のシロを病院に連れて行くのは
かなり慎重になる。
興奮して血圧が上がるかもしれない。
連れて行くときは最期のとき・・・
まだ、わからないけど
「安楽死」をお願いするとき・・・
それ以外ではおそらく行かないと思う。
シロは自然の力で、放射線治療も手術もしないで
ここまできた。
そして、今、日記を書いていると
「何か食べたい」というような顔をした。
ためしにゆでたまごを・・・
一口 食べた!
もう一口! 食べた!
フードを柔らかくしたもの・・・
食べない
ソーセージに薬を忍ばせたもの
食べない・・・
ゆでたまご・・
食べない・・・
とまぁ相変わらず難しいけれど
それでも、二口は食べた。
こんな風にシロは
自分の身体をきっと私よりよくわかっているのだろう。
食べないほうがいい時
食べられる時
それをちゃんとわかっているのだと思う。
やっぱりシロはしたいようにしてる。
きっとそうなのだ。
そう思うことにしよう。
だからって、放棄するつもりはない。
諦めるというのとも違う。
言葉にはうまくできないけど・・・
シロはもともと自分で考えて
自分で行動する犬だ。
こだわりもあるし
自分自身でルールもある。
だからきっと
シロなりのこだわりがあるのかもしれない。
それならそれを
サポートしたいとも思う。
久しぶりに、少し食べ物を口に入れたシロは
日の当たる縁側に外を向いて座る。
その後姿は
健康な時と何一つ変わらず
白くて丸くてフワフワとしている。
「シロ」と呼ぶと
甘えた顔でこっちを向く気がする。
シロのこの背中が
明日も穏やかでありますように・・・
とら
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