【
前回のつづき】
子宮外妊娠の手術で入院。
私にとって人生初めての入院だった。
それは今まで病気をせず健康だったんだと言えるんだけど
その時はただ空しかった。
夜中になるとどこかの部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
そう。ここは婦人科だから。
産まれる命があり
消える命がある。
そこが病院と言えるのだけど。
そんな声を聞きながら
やっぱり涙が止まらなかった。
だけど入院と言うのは大変暇なもので
ひたすら固いベッドに寝ていると
いろんなことを考える。
人間というのは最後には強い生き物で
いろんなことを考えているうちに
自分は幸せだなと思えるようになった。
確かに赤ちゃんは失ったし
お腹も切ったけれど
「あるもの」もいっぱいあった。
サルがいてくれる。
遠くに仕事で行っているけれど
週末には大急ぎで帰ってきてくれる。
お腹を切った私を冗談を言って笑わせ
私がお腹を押さえながら「も~!」と怒りながら笑う。
ただ、それだけなのに
幸せを感じた。
シロがこの世に存在してくれている。
私がいなくて寂しいだろうに
ちゃんと家を守ってくれて私を待ってくれてる。
あぁ、シロに会いたい。
シロを思いっきり撫でてあげたい!
実家の家族がいてくれる。
サルがいない平日に支えてくれる。
悲しい思いをさせただろうな。
私も悲しいけれど
あれほど孫を楽しみにしていただろうに・・・。
喜ばせられなくてごめんね。
寝ているだけの暇な脳はそういうことに気づかせてくれた。
何もかも絶望しかかっていた心に
いろんな暖かいものが流れていくようだった。
早く元気になってサルと一緒にご飯を食べたい!
向かい合って
ラーメンなんかをすすりながら
「おいしいなぁ~」って笑いたい。
願いはそれだけだった。
私の願いは案外小さなもんだな。
気付いたら少し笑えた。
笑った自分に少しびっくりして
今の自分をちょっと好きになれた。
でも、実際あの入院がサルとの距離を縮めてくれた気がする。
人生って奪っていくばかりじゃないのかもな・・
そう思った。
【つづく】
とら
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